豆本のこと
この前から、新作小説新作小説といっているけれど、これはいまだ形になっていないものの話。会期には間に合わないのです。間に合わない物件について書いているお粗末。
新作小説(仮題『五番町夕焼け楼』)が間に合わなかったのは、ひとえに、わたくしめの非才によるものであり、各位・各方面にたいして、何ともお詫びの言葉もない。
だったら引っこんでろと言われそうだが、そこで引っこめないところがもの書きのサガというのか。
新作小説(仮題『五番町夕焼け楼』)は、さかのぼること1973年の話であるが、主舞台は現在であって、さかのぼるのは作中人物たちの気だるい主観だ。
用意したものが間に合わず、代わりの品は、偶然のことながら、1937年の京都の別の話になった。
1973年の京都の話が1937年の京都の話で代替される。たくらんだわけではないが、これでご容赦を……。
三人展の趣旨にそって書かれたものではないので、五番町時代と関係ないといえばない。けれども、まったくつながりのない作品でもないわけで、そのあたりの微妙さも面白く、出品することにしました。雑誌初出のままなので、再録は初めて。今後も機会はあるかどうかはわからないけれど、今回のイベント用につくってみた。他では手に入らない体裁である。
じつは、この短編のアイデアのヒントは和灯屋からインスパイアされたものだし、舞台となる伏見の両替町には風工房の作業場があった。戦前の物語とはいえ、ここ数年、三人展を培養してきた「精神」が、作者のわたしにも自覚されない深部においてうごめいていたのかと、不思議な気分になったことも確かだ。
と、これは宣伝。
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